2015年4月10日金曜日

総主事コラム プログ 2015年4月

「命、芽吹く時」

春になった  虫たちがぞろぞろでてくる  花だって  つぼみをひらいて
でてくる  みんな  でてくる  ぼくだって  でてくる

(「春」 小3 竹中悠 北海道)

 まぶしい春の日差しに変わり、服も日々薄くなっていく。この詩を書いた竹中君は、北海道の小学生だ。4月に横浜で桜が咲いても北海道の開花は5月で1カ月も遅いのだ。春が待ち遠しい思いが伝わる詩だ。
 北国の春は、春の日差しで雪や氷の下から草や植物が芽吹いて、虫や動物たちがでてくるのだろう。そんな春に「ぼくだってでてくる」のだ。
被災地の岩手県宮古市や宮城県南三陸町の仮設住宅に、チューリップの球根や花の種を贈る花プロジェクトが喜ばれるのは、長く変化の少ない仮設住宅の暮らしの中で、土をいじり、花を育てるのは命を愛でる喜びなのだという。仮設住宅で生活しひきこもりがちな高齢者は、東北の寒い冬に霜や雪から花を守り、水やりなどの世話をするために毎日家から出てくるのだという。隣近所で花が成長する話に花が咲くのだ。
そして春。一斉に咲く花たちに喜び勇んで「みんなでてくる」。花には蝶や蜂、虫たちが一斉に出てくる。まさしく命の芽吹きの時だ。春の花に生きる力をもらえると花プロジェクトの継続が期待されている。
 新学期の春は、すべてが動き出し新しい日々を迎える時だ。これまで見えない土の中でしっかり栄養を蓄え、根付いた根の上で花を咲かせてほしいものだ。小さなつまずきはあるだろう。そんなつまずきを大人が支えて、「僕だってでてくる」という子どもたちの素直な心を育みたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)