2017年4月10日月曜日

総主事コラム ブログ 2017年4月

飛び立ついのち

いつだったか
きみたちが
空をとんで行くのを見たよ
風に吹かれて
ただ一つのものを持って
旅する姿が うれしくてならなかったよ
人間だってどうしても
必要なものはただ一つ
私も余分なものを捨てれば
空がとべるような気がしたよ
(詩 星野富弘)

 ようやく春を迎えようとしている。春の花は桜もあるが、どこにでもあるタンポポも春を教えてくれる。タンポポのふわふわした「わたぼうし」を摘んで息を吹きかけて飛ばしたことがある方も多いだろう。
 「わたぼうし」が出来るまでの絵本を見たことがある。一年かけて育ったタンポポの花が咲いているのは、わずか7日から10日ぐらいだ。咲き終わり、花をしぼませて1カ月ぐらいかけて綿毛を育てて、ある日一気に「わたぼうし」が咲く。とても神秘的で美しい。
 傘のような綿毛一本の柄の下に種を付けている。だいたい80本から200本ついているそうだ。飛ぶ距離は50mぐらいから、一度宙に舞い上がると10キロも飛ぶそうだ。まるで命の旅のようだが、どの地に落ちても根を強く深く育つようになっていて踏まれても育つのだという。
 4月は新しい学校や学びの場、職場に旅立つ姿を見かける。不安の中にも期待と希望が満ちている。それぞれの場において、しっかりと根付いてほしいものだ。
 大人は多くの期待をかけるが「必要なものはたった一つ」。根が深く育つよう見守り、「それでいいんだよ」と水をあげるように励ましの声をかけ続けよう。自ら育ち、綿毛のように飛び立つ心を大切にしていこう。4月、私たちも余分なものを捨て飛び立ちたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)